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児童書「モモ」

今だからこそ読み返したい本

「モモ」はドイツの作家ミヒャエル・エンデによって書かれた児童書です。

ミヒャエル・エンデといえば「ネバーエンディング・ストーリー(はてしない物語)」の作者としても有名ですが、「モモ」も世界を代表する児童書となっています。

児童書の中には子供時代だけでなく大人になってからも十分に通じる名言が含まれている作品も数多くありますが、中でもこの「モモ」は大人の目から見ると非常に痛い鋭い指摘が多く見られます。

子供時代に読んだ時にはおもしろい冒険ものとして感じられるのに、大人になってからもなぜか心に残り続けて読み返してやっとその本当の意味がわかるという、たいへん示唆に富んだ作品としておすすめです。

「モモ」の舞台となっているのはイタリアのローマによく似た都市で、そこでは「時間貯蓄銀行」という組織が存在しており、時間泥棒と呼ばれる灰色の人たちがあちこちを歩きまわっています。

表題となっている「モモ」は主人公である小さな女の子の名前であり、施設から逃げてきたあとに都市の円形劇場の廃墟に住み着き、周りの人たちからの援助を得ながら生活をしています。

物語はこのモモと時間泥棒たちとの戦いによって進んでいくのですが、最終的には取り戻した時間を花にしたものを見ることで終わりになっています。

登場人物たち一人ひとりが魅力的なのもそうなのですが、文体が独特というか日本の童話とは一味違ったテンポなのでそれがまた子供心に印象に残る理由なのかもしれません。

子供たちに読ませたい理由

モモも私自身が子供たちにできるだけたくさん読んでもらいたい作品の一つです。

邦訳されたハードカバー本では文字もしっかり読みやすくなっているだけでなく、カバーのデザインも大変キレイにまとまっているので、本棚に一つ備えておきたいものになっています。

モモは小学生向けの推薦図書リストにも入っており、6年生からおすすめの本となっているのですが読み聞かせをするのであればもっと早くからでも十分に子供たちは理解ができるのではないかと思います。

私が個人的にモモをおすすめしたい理由は、文章がとても簡易で読みやすいのに内容がとてもシリアスで心に入り込むような描写となっているからです。

そういえばと思い返してみると自分が子供の時には一度ならず「どうして大人はいつも忙しそうにしているんだろう?」と感じたことがあるのですが、そのあたりの世界観がそのままに表現されているので大人になってからもその辺の描写を見るとまるで子供時代に戻ったかのような不思議な気分になります。

大人になった今にしてみると、きっと子供たちから同じように不思議な忙しさに巻き込まれているように思えるんだろうなと感じたりもします。

そんな子供の心と大人になってからの心を二度往復できる不思議な作品であるということが、私の感じる「モモ」の大きな魅力です。

エンデの他のおすすめの本

モモの作者ミヒャエル・エンデは、作家として他にも数多くの名著を残しています。

児童書やファンタジー小説ももちろん素晴らしいのですが、「モモ」に感動した子供たちが大人になってから読んでもらいたいと思う本として「エンデの遺言」があります。

「エンデの遺言」は正確にはエンデ本人の著書ではなく生前に書かれた文書をまとめたものなのですが、その世界観が非常に独特でそれまで当たり前のように持っていた「お金」という概念が一気にひっくり返されたかのような衝撃を受けます。

「モモ」や「ネバーエンディング・ストーリー」を読んだあとでこの「エンデの遺言」を読むと、なるほどこういう考え方をする人だからこそのファンタジーなのだなということを納得することもできます。

こうした名著をあとから楽しむことができるためにも、まずは子供時代から「モモ」を読んでおいてもらいたいと思っていたりもします。